あの頃:鍵さえかければ、言葉はいらなかった

あの頃

子どもの頃を思い起こせば

みんな実直であったものだ

一言、一言に心がこもっていた

 

早朝の駅から眺めれば

通りは真っ暗で人気がなく

干物の焼ける匂いが漂っていた

 

あの頃は時の流れが遅かった

人の流れも、郵便も

一生に愛せるのはたった一人だけだった

 

あの頃は錠前も美しかった

鍵には綺麗な細工が施され

鍵さえかければ、言葉はいらなかった

—————————————————————–

日本人友人訳して頂いた現代詩です。

以下は原文と訳文の対照になります。

—————————————————————–

《从前慢》 作者 木心

记得早先少年时
(子どもの頃を思い起こせば)
大家诚诚恳恳
(みんな実直であったものだ)
说一句 是一句
(一言、一言に心がこもっていた)

清早上火车站
(早朝の駅から眺めれば)
长街黑暗无行人
(通りは真っ暗で人気がなく)
卖豆浆的小店冒着热气
(干物の焼ける匂いが漂っていた)

从前的日色变得慢
(あの頃は時の流れが遅かった)
车,马,邮件都慢
(人の流れも、郵便も)
一生只够爱一个人
(一生に愛せるのはたった一人だけだった)

从前的锁也好看
(あの頃は錠前も美しかった)
钥匙精美有样子
(鍵には綺麗な細工が施され)
你锁了 人家都懂了
(鍵さえかければ、言葉はいらなかった)

この記事をシェアする