ブリッツスケール:企業が劇的な成長を遂げる方法とは

ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の編集者Tim Sullivanが行ったインタビューで、ホフマンはブリッツスケールについて語ってました。私たちはビジネス観点シェアーという趣味で訳しました。お読みになった皆様は他の媒体で公開しないようにお願いいたします。私は中国語バージョンを読んでから社内メンバーにシェアーするために、優秀な友人にやくしていただきたいと頼みに行きました。友人は中国語だけではなく、英語の原文まで見つけて対照しながら訳していただきました。お読みになった方々にヒントになればと思います。


ブリッツスケール:企業が劇的な成長を遂げる方法とは

多くのプラットフォームビジネスは、規模があってこそ価値がある。だから、ブリッツスケール(劇的な成長)が必要なのだ。

訳|戴汨(JOY CAPYTAL共同創業者)

この文章は長すぎるので翻訳するのはやめようかとも思った。しかし、結局二晩もかけて翻訳した理由は単純だ。リード・ホフマンはシリコンバレーの人脈王であり、Paypal(ペイパル)、Facebook(フェイスブック)、Linkedin(リンクトイン)の創立と投資に参与している。創業初期段階での企業の成長に関する彼の見解には学ぶ価値がある。また、Wishの創業者Dannyもこの文章から得るところが大きかったのであろう、強く薦めてきた。

 

ブリッツスケール(劇的な成長)の意義は下記の通りに説明される。多くのプラットフォームビジネスは規模があってこそ価値があり、ユーザーはアプローチしてこそ獲得することができる。よって、ひとたび商品が市場の需要に合致することを確認すれば、何よりもまず事業拡大を図るべきであり、その拡大の過程で課題を解決すべきである。

 

先日、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の編集者Tim Sullivanが行ったインタビューで、ホフマンはブリッツスケールにおける挑戦とリスク、リターンについて語った。

 

HBR:まずは基本的な質問から始めましょう。ブリッツスケール(blitzscaling、劇的な成長)とは何ですか?

ホフマン:ブリッツスケールとは、真に急速な成長が必要な時に行うものです。迅速に企業を立ち上げ、巨大市場、多くの場合グローバル市場に商品を提供し、規模という点からパイオニアになることであり、一種の学問や芸術でもあると言えるでしょう。

 

そのような起業活動は大きなインパクトを持っています。この種の会社は未来の多くの仕事や産業を創出するのです。例えば、アマゾンは本質的にeコマースを創造したと言えます。今日、アマゾンは15万人を超える従業員を抱え、出品者や提携先のために数えきれないほどの仕事を作り出しています。また、グーグルは我々の情報の入手方法を根本的に変革しました。グーグルは6万人を超える従業員を抱え、アドワーズとアドセンスの提携先にさらなる仕事を作り出しています。

 

HBR:なぜ急速な成長に重点を置くのですか?

ホフマン:私たちは今、ネットワーク時代を生きています。インターネットだけではありません。グローバル化自体がネットワークの一種の形式なのです。全世界的な輸送、通商、支払い、情報の流れのネットワークが構築されています。そのような環境においては、より迅速に動かなければなりません。地球上のいかなる場所における競争も、あなたを打ち負かす可能性があるからです。

 

ソフトウェアはどの大きさの市場においても限界費用が事実上ゼロですから、ブリッツスケールとは自然と密接な関係を持っています。ソフトウェアが全ての業界で不可欠なものとなるにつれて、物事はさらに速く動くようになるでしょう。AIの機械学習も加わり、変化はますます速く繰り返されます。したがって、私たちは今後さらに多くのブリッツスケールを目にすることでしょう。それも、少し多く、ではなく、ものすごく多くのです。

 

HBR:なぜこの「ブリッツスケール(blitzscaling)」という言葉を用いることにしたのですか?この言葉からは興味深い連想をさせられますね。

ホフマン:「biltzkrieg(電撃戦)」という言葉と第二次世界大戦との関連性から、ためらいは確かにありました。しかし、「biltzkrieg(電撃戦)」という言葉が持つ意味が私の表したい意味と非常に近く、わかりやすいと思ったのです。電撃戦が軍事戦略として使われるようになる以前は、軍隊は補給線を超える地点まで進出することはなく、それが軍隊のスピードに限界をもたらしていました。

 

電撃戦の理論とは、物資を最低限必要なものに絞ることにより、非常に迅速な進撃が可能となり、敵の不意を突いて勝利を得られるというものでした。引き返せるのは目的地への中間地点まで。そこを超えるという決断は、一か八かの大博打です。結果は大勝か惨敗のどちらかしかありません。

 

ブリッツスケールもこれと似た考え方が基になっています。あるスタートアップが劇的なスピードの成長が必要だと判断した時、通常の合理的なスピードで拡大する会社より、ずっと大きなリスクを負うことになるからです。

 

このようなスピードは、攻守どちらの意味でも必要です。攻めの観点からいえば、あなたのビジネスは一定程度の規模を持って初めて価値のあるものかもしれません。Linkedin(リンクトイン)は数百万人のユーザーが加入したからこそ価値が生まれました。eBay(イーベイ)のようなネットオークションは売り手、買い手の双方が一定数いないと成り立ちません。Paypal(ペイパル)のような決済サービス、アマゾンのようなeコマースビジネスは利益率が低いため、非常に大きな規模が必要です。

 

守りの観点からも、競合より速い拡大が望まれます。先に接触した者がそのユーザーを獲得する可能性が高く、規模のメリットは一人勝ちの状況を導くことがあるからです。しかも、グローバル化が進む環境では、真の競合が誰なのか必ずしも気づけるとは限りません。

 

HBR:規模という概念には複数の次元がありますか?

ホフマン:3つの異なる次元があります。一般に注目されるのは、その内の2つである売上の拡大とユーザー数の拡大です。もちろん、この2つを攻略できなければ、他のことは問題にもなりません。しかし、組織の拡大無しにこれらの領域を拡大できるビジネスはほとんどありません。組織の規模と執行能力がユーザーと売上の獲得の鍵となるのです。

 

規模はその大小によって、一連の段階として考えることができます。従業員数が一の位までのビジネスは「家族」規模、十の位までは「集落」規模、百の位までは「村」規模、千の位までは「都市」規模、万の位までは「国家」規模といった具合です。もっともこれらはだいたいの数で、正確な基準を表しているのではありません。15人程度の従業員を持つ「家族」企業、150人程度の「集落」企業などはよく見られます。各段階において、資金調達、従業員の採用と研修、商品のマーケティングなどの企業の各機能の運営の仕方は大きく変化します。

 

ブリッツスケールを実行している時、これらを運営するために使える「ルール」はありません。「発見的問題解決」、すなわち意思決定の助けとなる指針をその場で発見し、学ぶことが必要なのです。組織の規模とは実際の従業員の数というより、企業の特徴によって決定されます――従業員が150人を超えたところで物事が劇的に変わるということはありませんから。また、企業の各機能の拡大を同じ時期、同じ速さで実行しているとも限りません。初めの段階では、他の機能に比べ、カスタマーサービスと売上の拡大に力を入れることが多いでしょう。ただ、そうとはいえ、その他の機能のブリッツスケールも結局は必要となります。

 

したがって、企業を終始、全体としてとらえることが非常に大切なのです。人材をいかに配置し、育てるのか。企業文化をいかに保つのか。コミュニケーションはどのように行い、競争環境はどのように変化するのか。問いかけなければなりません。

 

HBR:スタートアップはいつブリッツスケールを開始するのでしょうか?

ホフマン:「家族」規模の企業は一般に資金調達と商品・サービスを明確化する段階にあります。まだ商品を発売していない可能性も大いにあるでしょう。

 

「集落」規模が、真の意味での企業が始まる段階です。この段階でブリッツスケールを開始するのは非常に珍しいといえるでしょう――聞いたことが全くないわけではありませんが。Paypal(ペイパル)やInstagram(インスタグラム)のような爆発的な人気をもつ商品がない限り、この段階でブリッツスケールを開始することはありません。

 

より典型的な状況としては、すでに何らかのバージョンの製品・サービスの販売を開始し、ターゲット市場も確定しているが、そのスタートアップが本当に大規模に拡大することができるかまだ確信が持てないということが多いでしょう。どんな時でも、一定程度のリスクは存在するからです。商品が市場の需要に合致しているかどうか確信がないため、この段階では拡大しないという判断がなされるかもしれません。あるいは、前述のような攻守双方の理由から必ず拡大が必要だと確信しているので、とにかく前進することを決断することもあるでしょう。

 

したがって、ブリッツスケールというプロセスは、一般に「集落」と「村」の間の段階で開始されます。その時点までに、商品が市場の需要に合致していることを確実にし、ある程度のデータを入手し、競争環境の理解が進みます。そこが、ブリッツスケールのロジックが明確に立ち現れてくる時なのです。

 

ひとたびあなたが――自己及び他者に――興味深いカテゴリーと大きな市場機会がそこに存在することを証明し始めると、ありとあらゆる競争を呼びこみます。下からは、他のスタートアップが類似した製品又はサービスを発売し、あなたより先に市場で規模を確保しようと突き上げてきます。上からは、すでに成熟した企業が自らの強みを利用し、あなたの一部又は全部の市場を奪おうとしてくるでしょう。

 

一番にブリッツスケールを開始するスタートアップには二つの強みがあります。集中と速度です。成熟した企業はそれほど速く動かず、また、集中されていない傾向があります。一方、競合するスタートアップはおそらくまだ勢いをつけきれていないでしょう。(もっとも、彼らはあなたと同じぐらい速く、集中しているかもしれませんが。)この典型的な例であるGroupon(グルーポン)は、発展の途中で上下双方からの凄まじい競争に遭遇しました。そして、迅速な拡大と耐久力のある商品の構築の両方を同時に行うことができなかったため、根本から業界を覆す潜在的機会を失ったのです。

 

HBR:ブリッツスケールの過程で、どのような組織に関する課題に直面しますか?

ホフマン:ブリッツスケールは常にマネジメントという観点からは非効率です。しかも、多くの資金を高速に消費してしまいます。しかし、規模拡大のためにはこれらの非効率さを進んで受け入れなければなりません。これは大規模な組織における最適化とは正反対の行動です。

 

例えば採用活動では、従業員の質と企業文化を保ちながら、できるだけ速くできるだけ多くの人材を集める必要があるでしょう。そのためにはどうすれば良いのでしょうか。各企業により切り口は異なります。Uber(ウーバー)のブリッツスケールの過程では、採用されたエンジニアにマネージャーはこのように尋ねたものでした。「以前に一緒に仕事をしたエンジニアの中で最も優秀な三人を教えてください。」そして、それらのエンジニアに採用通知を送るのです。面会も、経歴照会もありません。採用通知だけなのです。彼らはエンジニア部門を急速に拡大しなければならず、これが彼らの使用した鍵となる手法でした。

 

私たちもPaypal(ペイパル)の拡大の過程でこの課題に直面しました。2000年の初め、決済取引量は日々2~5%の割合で増加しており、そのような成長が、カスタマーサービスという点でPaypalを危機に陥れたのです。パロアルト市(カリフォルニア州)の電話帳にしか連絡先を載せていなかったにもかかわらず、怒ったユーザーたちは代表番号を探し当て、ランダムに内線に電話をかけてきました。一日24時間、文字通りどの電話を取っても怒ったユーザーたちと繋がるという状況です。そこで、私たちは電話のベルを切ってしまい、携帯電話を使い始めました。しかし、それでは問題は解決しません。カスタマーサービス能力を早急に築き上げなければならないことはわかっていました。しかし、シリコンバレーでは難しかったので、オマハ市(ネブラスカ州)での拡大を決めました。これはちょうど第一次ITバブルの頃でした。

 

私たちはネブラスカ州知事を説得し、インターネット革命の一端を担う意義を納得させました。彼とオマハ市長が記者会見を開き、Paypalがカスタマーサービスオフィスをオープンすることを発表したところ、洪水のように志願者が押し寄せたので、4週間連続で、週末に会社全体の約20%の人が飛び回り、面接に当たりました。履歴書を持ってやって来た応募者に集団面接を行い、6週間で私たちは100名のカスタマーサービス担当がメールを処理する体制を整えました。メールとWEBベースのカスタマーサービスのみを提供することは、今ではインターネット企業がとる典型的手法と言えます。しかし、当時、私たちはカスタマーサービスにおける困難を乗り切る方法を非常に迅速に見つけ出さなければなりませんでした。何をすべきか教えてくれる手引書などありませんでした。そして、今もないのです。

 

HBR:「ルール」がないのなら、どうやって方法を見つけ出せばよいのですか?

ホフマン:通常の「ルール」に縛られないことが、逆に強みとなることがあります。例えば、Paypal(ペイパル)初期に発生したクレジットカード詐欺と返金がどれほど深刻な問題であるかを事前に理解していたなら、私たちもこのようなサービスが成功するとは考えなかったかもしれません。驚愕するほどの損失を生むとは認識していなかったのです。「何よりもまず、詐欺を防がなければならない」――銀行員なら誰でも知っているルールです。これが、あらゆるPaypalと類似したサービスに銀行員が手を出さなかった理由でした。私たちの無知こそが迅速な事業形成を可能としたのです。もちろん、後で走りながらの問題解決をする羽目になりました。私たちはすでに地雷区域にいたからです。

 

私たちが2000年に多くの損失を出した時、新規ユーザー紹介奨励金のせいだという批評が多くなされました。しかし、実際はそうではないのです。この業界の広告による平均的顧客獲得コストは一人あたり40ドルでした。よって、友達を紹介した人と、紹介された人に10ドルずつプレゼントしたことにより、コストを半減させたのです。

 

なぜ「ルール」に頼るのではなく、「発見的問題解決」をしなくてはならないのでしょうか?それは、従来の知恵に従って行動する競合相手たちから抜きん出るための強みが必要だからです。「ルール」が全くないと言っているのではありません。「自分のお金を盗まれないようにしろ」――これは「ルール」です。但し、強みを生み出すものでは決してありません。

 

HBR:その「発見的問題解決」という方法は完全に異なる組織形態を生み出すように聞こえます。

ホフマン:そうなのです。ともにブリッツスケールにより発展した企業であるグーグルとマイクロソフトの大きな違いの一つは、グーグルはフラットな組織であろうとしたのに対し、マイクロソフトはヒエラルキー型組織を構築したことです。グーグルでは、一人のマネージャーが少なくとも8人の直属の部下を持たなければならないことになっていましたが、その上限はありませんでした。中間管理コストを最小化するためには、10人、15人、20人、さらには100人もの直属の部下を持つことさえありました。一般には、8人以上の直属の部下を持たせない方が、マネジメントが効率化すると言われています。しかし、グーグルはテクノロジーの開発に極度の集中を図るため、フラットな組織を選択し、そのような効率性は犠牲としたのです。一方、マイクロソフトはより伝統的なヒエラルキー型のアプローチを選択しました。

 

HBR:そういえば、グーグルはエリート大学のGPAが非常に高い人しか採用しないと聞きました。「発見的問題解決」として、これには多くの優秀な人材を採用する機会を失うという明らかな副作用がありますが、優秀なジェネラリストを大量かつ迅速に採用するという目的からは理に適っているということなのですね。

ホフマン:それは多くの落胆のもとにもなりました。「私の友達は条件を満たさないから採用されない。本当に良い人材だとわかっているのに。」これに対し、グーグルはこう答えます。「申し訳ないが、それが我々のブリッツスケールにおけるやり方だ。本当に重要なことに注力するために、シンプルな『発見的問題解決』の手法が必要なのだ」と。また、エリート大学からしか採用しないという方法には、拡大の過程でもブレない企業文化を形成・維持しやすくするという利点もありました。

 

HBR:なぜ企業文化はブリッツスケールにとってそれほど重要なのですか?

ホフマン:組織が非常な速度で拡大しているため、ヒエラルキーに基づいた垂直的・トップダウン方向だけでなく、水平的・各個人間レベルでも、各社員が互いに責任を負うようにしなければならないからです。

 

HBR:「村」から「都市」規模に移行する際、他にどのような「発見的問題解決」が重要ですか?

ホフマン:各レベルの専門化がいっそう重要となってきます。例えば、大規模なエンジニアリング部門はどのように運営すればよいのか、市場で高額の資金をどのように運用すればよいのか、といったことを理解しなければなりません。そのために、さらには顧客と市場を理解するためにも、計器盤や分析手法、指標が必要になります。

 

また、より高い確実性も必要です。「村」段階のブリッツスケールでは許容されていた非効率が規模拡大後は容認できなくなることがあるからです。例えば、サイトのダウンを確実に防ぐことのできる人を雇わなくてはなりません。製品のリリースにもさらに慎重にならなければなりません。その結果として、順応性が縮小します。Facebook(フェイスブック)が「スピードと変革」から「安定とスピード」にモットーを変更したのが有名な例です。

 

さらに、集中特化型組織から複合型への転換を行い、企業のリソースを2つ以上の事に同時に注ぐようになります。「集落」規模では、全ての人が一つの優先事項に集中していました。「村」規模では、拡大を行いたい事項への注力を始めていますが、同時に、その他の試み――ソフト開発者のためのツール開発、テストマーケティング、有料広告など――を検討し始めます。さらには、企業買収チームなどの新たな機能を付加するかもしれません。これら全てが企業として成功するという大きな目標のためなのですが、「村」から「都市」へ移行するにつれて、機能間の差別化が進みます。これが複合型への転換なのです。

 

「都市」規模の企業は通常、二つ以上の主要商品を持っています。グーグルにおけるアドワーズ、マイクロソフトのオフィスなど、主となる収入源が一つあるかもしれませんが、同時に複数の異なる商品も抱えており、各商品どうしの関係が明確化されています。また、各々の商品自体が複合的である可能性もあるでしょう。

 

多くのシリコンバレー企業は「村」から「都市」規模に移行する頃にグローバル化を進めますが、一日目からグローバル化しているケースもあります。Linkedin(リンクトイン)のリリース日、私たちはすでに15の国家をプルダウンリストに入れていました。そして2日目には、リスト上にない国家の人からメールを受け取りました。それは興味深い地理の授業を受けているようでした。苦情を受けるまで、フェロー諸島が一つの国家であることを知りませんでしたから。そこで、私はちょっと歴史を勉強してから、フェロー諸島もリストに加えました。(注:フェロー諸島はデンマーク自治領であり、デンマーク本土、グリーンランドと共にデンマーク王国を構成する。)

 

HBR:一企業内の異なる部署が異なる手法を用いることがありますか?

ホフマン:はい。例えば、グーグルはAndroid(アンドロイド)とChrome(クローム)の二つのOSを同時期に開発しました。グーグルがアンディ・ルービンとそのスタートアップ、Android Inc.を買収した時、アンディはラリー・ペイジ直属で、企業内起業家としてAndroidという試みに集中しました。グーグルの立場からすれば、アンディがプロジェクトを成功させるために必要なものを与えたということでした。

 

アンディはAndroidが一貫性と集中を保つことを望みました。例えば、Android担当の社員証だけがAndroidのオフィスへのアクセス権を持ち、一般のグーグル社員は入ることができませんでした。Androidチームが開発したソフトウェアはグーグルで定められているコードレビューを行わなくてよいとされていました。また、アンディは会社の確認なしに、携帯電話事業者と別個の取引ができることを望み、プロジェクトを成功させるためなら代償も厭いませんでした。

 

全く異なる構想の下で、Chrome(クローム)はC++を用いて開発され(AndroidはJavaを用いて開発された)、スマートフォンではなく、ノートパソコンとブラウザに特化していました。グーグルはAndroid とChromeを一つのプロジェクトとし、OSという商機に、より一貫性をもって取り組むという、異なる方法を取ることもできました。しかし、グーグルは代わりに複合型アプローチを選択しました。そのプロジェクトに最もふさわしい人を起用し、その人に仕事を完成させるために必要なものを与えることで、完全に独立したプロジェクトを運営させ、独自の手法を発展させたのです。

HBR:以前、このような問いを投げかけていらっしゃるのを耳にしました。「無視できる問題は何か?言い換えれば、各段階で何が解決すべき最も重要な問題なのか?」

ホフマン:スタートアップについて説明するために私がよく使う比喩の一つに、「崖から飛び降りて、落ちながら飛行機を組み立てている」というものがあります。正しい問題を正しいタイミングで解決しなければ、ゲームオーバーです。死への危機意識が優先事項に鋭い焦点を当てさせるのです。

 

ブリッツスケールの途上では、不可避的にものすごい量のトラブルが起こるので、それらを一度に解決することはできません。優先順位づけが必要なのです。より多くの投資を呼び込むため、投資家が関心をもつ問題は解決しなければなりません。資本の支持は、地面に着くまでの問題解決に使える時間が長くなるということを意味します。最初に得た資本だけで、また、二回目の資本を得たとしても、それだけで飛行機を飛ばすことは難しいでしょう。マネジメントの一般的原則に、「チームの運営上に問題がある場合は、即座に解決すべきだ」というものがあります。しかし、ブリッツスケールの最中ではこのような問題は常に発生するものなのです。しかも、非常に速い速度で動いているので、今日の問題と明日の問題は異なります。仕事は常に継ぎはぎだらけで醜く、ダクトテープで張り合わされているような状態です。したがって、チームの機能不全といった問題はしばらく無視するかもしれません。

例えば、エンジニアたちが不満を持っているとしましょう。あなたはこういったことを考えます。「開発ツールを作って、彼らが効率良く仕事ができるようにするべきだろうか?そのために、多くのエンジニアを動員するべきだろうか?」しかし、あなたはチームの大きさが急速に変化し続けていること、つまり、今作ったどんなツールも無用の長物となってしまうことを知っています。よって、この問題を無視することが組織内に不満を生み、人々にストレスがたまることがわかっていても、まだその解決は試みません。ブリッツスケールではない状況では、このような問題は第一優先事項となるかもしれませんが、ブリッツスケールの最中では、それらをただ放置しておくより他ないのです。また、たとえ実際にその問題を解決したとしても、ほんの短期間でまた問題が起こるのだということを、肝に銘じておかねばなりません。

HBR:その種の決断をする際、理由を伝えて人々の不満を緩和することができますか?

ホフマン:はい。但し、ある程度までです。本当に皆を団結させるものは、自分たちは何か偉大な物を創造するために高速で前進しているのであり、自分もその成功の一部になるのだという認識なのです。

私が近くで目にする機会のあったほぼすべてのブリッツスケールを行う企業は、社内に多くの不満を抱えています。役割と責任の不明確さや、業務フィールドの分かりづらさに対する不満などです。「ああ!もうカオスだ、むちゃくちゃだ!」 そのような企業――Paypal(ペイパル)、グーグル、eBay(イーベイ)、Facebook(フェイスブック)、Linkedin(リンクトイン)、Twitter(ツイッター)のどれであれ――をまとめ上げているのは、今起こっていることへの興奮と、素晴らしい未来が待ち受けているという見通しです。

自分は何かすごいことをしているチームの一員だから、個人的な不満は乗り越えよう。もっとわかりやすいフィールドでもっと効率良く仕事がしたいし、組織ももっとスムーズに回って欲しい。でも、とりあえずそれは我慢しよう、この苦労の見返りはきっと来るのだから。

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